【禁断の】パイロットの給料事情を全公開

高給取りの職業ランキングでは常に上位に位置付けされるパイロット。

漠然とパイロットの給料は高いというのはわかっていても、実際にいくらもらっているのかや、その給与体系について知っている人は少ないのではないでしょうか?

その理由の一つが、日本ではパイロットの給料について話すことはタブー視されてきました。

UFOの存在然り、隠されると知りたくなるのが人間の性。教えたくなるのがソラマルの性。

今回は、そんな秘密のベールに隠されたパイロットの給与について包み隠さず全てお話します。

パイロットの平均年収は1700万円で、大手は高く LCCは安い。

巷で流れているこんな情報を目にしたことはありませんか?

この情報は、半分合っていて、半分間違っています。というのも、パイロットの給料は機長、副操縦士で大きく差があり、かつ月の乗務時間によって大きく変動します。乗務時間が多いLCCの方が大手よりも貰える額が多くなることもあります。

そういった情報はなかなか現職の人でないとわからない話ですので、現役でバリバリ飛んでいる私が、丁寧に解説をしていきたいと思います。

そんなくどい説明はいらないから早く結果だけを教えて欲しいという方へ・・・。

副操縦士:年収800万円〜1800万円

機長:年収1000万円〜5600万円

これは、国内だけでなく、海外の航空会社の給与を、日本の税制に置き換えた場合の年収です。

それでは、更に詳しく見ていきたい方はこの先へどうぞ。

機長と副操縦士

まずは、基本的なことから。

よく、”ソラマルさんは副キャプテンですか?” と聞かれることがありますが、正式にはエアラインパイロットは2つの肩書きがあり、「機長」「副操縦士」に分かれます。キャプテンというのは、パイロット同士の間では、通常「機長」のみを指します。

更に細かく分ければ、外資系で採用されているシニア・ファーストオフィサー、セカンド・オフィサーなど、色々ありますが、基本は「機長」と「副操縦士」です。

機長は操縦席の左席に座り、副操縦士は右席に座ります。

今回は給料についてですので、それぞれの仕事について踏み込んだ説明は割愛します。

給与体系

パイロットの給与は大きく3つに分けることができます。

  • 基本給
  • 乗務手当
  • Per diem (パーディアム)

この3つを合計したものが、毎月支払われるパイロットの給与になります。

更に細かく言えば、住宅手当や、交通費、子供の教育手当、など各種手当はありますが、それは会社によっても違うので今回は割愛したいと思います。

また、同じ会社で同じパイロットの仕事をしていても、外国人パイロットの給与が現地のパイロットよりも優遇されるといったこともあります。それはエージェントを通じて会社に応募をするために、会社の直接採用ではなく、エージェントとパイロットとの契約になるため、給与に差が生じるといった理由です。

そういった細かい話は今回は無しにして、パイロット給与はどういった仕組みなのかということをわかりやすくお伝えしたいと思います。

それでは、それぞれについて詳しく説明していきたいと思います。

基本給

パイロットの基本給は、機長と副操縦士によって大きな差があります。また、会社によっても大きな差があります。

ですので、パイロットの基本給は○○です。と一言では表せません。

例をあげると、副操縦士の月給がA社とB社で、手取り額が月に同じ80万円の場合、

A社は基本給40万円、B社は基本給70万円ということもあります。

それはなぜかというと、次に解説する乗務手当が違っているからです。

A社B社
基本給40万円70万円
乗務手当35万円5万円
パーディアム5万円5万円
合計80万円80万円

基本給が少ない会社は、その分乗務手当を多く支給しています。

この基本給と、乗務手当に関係する話として、最低保障時間といったものがあります。

乗務手当の話をする前に、この最低保障時間について説明します。

最低保証時間とは?

ほとんどの航空会社では、この最低保障時間というのが定められています。

これは何かというと、パイロットの毎月の乗務時間を一定時間の給与として保障してくれるものです。

例えば、昨今のコロナ禍ではパイロットの仕事が激減し、乗務時間が10時間にも満たないことがありました。その場合、例えば最低保障時間が50時間と決められている会社では、乗務時間が50時間に満たない月でも、50時間乗務した分の給与を保障してくれます。これが最低保障時間です。

多くの場合では、基本給の中にこの最低保障時間を含んでいます。

先ほどの図で言うと、B社の基本給が70万円と高いのは、基本給の中に最低保障時間分の乗務手当が既に含まれているからです。一方、A社は、最低保障時間分の給与は乗務手当として、基本給とは別で支給しています。これは会社によって異なります。

A社B社
基本給40万円70万円
乗務手当35万円5万円
パーディアム5万円5万円
合計80万円80万円

先日、ANAでは既存の50時間の最低保障時間を、30時間に減らす仕組みを組合に掲示したといったニュースがありました。

全日空パイロットの賃金、減収時は連動して支給額減らす仕組みに…組合に提示
【読売新聞】 全日本空輸は30日、労働組合に対し、パイロットの賃金制度を見直す意向を伝えた。対象は「乗務手当」で、コロナ禍とは別に、パンデミック(世界的大流行)や天災が将来発生し、乗務時間が減る際は、連動して支給額を減らす仕組み。航

会社の業績が悪く、パイロットの乗務時間が少なければ、もちろん最低保障時間を減らした方が会社にとっては好都合です。

そもそもなぜこれが存在するかというと、パイロットの仕事は、毎月のスケジュール次第で乗務時間が大きく変わってしまい、給与が一定ではないからです。

これがあることにより、会社都合で毎月の給与が大きく変動することを防ぎ、安定した収入を得ることができます。

それなら勿論、パイロットとしては最低保障時間が高い方がいいのでは

実はこれ、そうとも限らないのです。

それについては次の乗務手当で詳しく解説します。

乗務手当

なぜパイロットの給料がこんなに高いのかというと、この乗務手当があるからです。

例えば、最低保障時間が50時間の会社で、月に60時間の乗務をした場合、保障されている50時間分の乗務手当にプラスして10時間分の乗務手当がもらえます。

しかも、この10時間分については、over timeといって、通常もらえる乗務手当より会社によっては金額が高くなることもあります

上で述べた、最低保障時間が高い方がいいとは限らない。という理由ですが、このover time分の乗務手当が関係しています。

例えば、通常の乗務手当が1時間あたり1万円、Over time分の手当が1時間あたり2万円とした場合で、50時間の乗務をした場合の給与の差を、最低保障時間の異なるA社とB社で比較してみます。

50時間飛んだ場合A社B社
基本給50万円30万円
最低保証時間50時間30時間
Over time0時間20時間
Over time分040万円
合計50万円70万円

上の結果から見てわかる通り、最低保障時間が低い場合で、月の乗務時間が多くなると、その分over timeとしてもらえる給与が多くなるので、結果的には貰える給与も高くなります。

これが、私が上で述べた「最低保障時間は高ければいいとも限らない」といった理由です。

しかし、昨今のコロナの影響により、毎月の乗務時間が70〜90時間が平均だった以前の状況から、多くの会社が毎月10〜40時間ほどまで減ってしまいました。このような状況では、最低保障時間が高い方がパイロットにとってはいいということになります。

また、冒頭でお伝えした「乗務時間が多いLCCの方が大手よりも貰える額が多くなることもあります」というのは、まさしくこれが関係しています。月の乗務時間はLCCの方が多くなりがちですので、その分、最低保障時間を超える給料が大きくなります。そうすると、大手のパイロットよりもLCCパイロットの方が月収が高くなることもあります。

Per diem (パーディアム・ステイ手当)

最後に独特な手当、パーディアムについてご紹介します。

これは何かというと、ステイ先での食事代を会社が負担してくれるといった給与になります。

多くの会社は機長、副操縦士ともに同じ金額です。

金額については会社によってバラバラですが、日本の会社の場合は1日あたり3000円〜5000円といったことが多いです。月に5日のステイがあった場合、この金額に5日を掛けた分の金額が給与として支払われます。

海外の会社では、1日ではなく、1時間あたりといった計算をする会社が多いです。

およそ1時間あたり2ドル〜5ドルが相場です。私のような長距離路線を飛ぶパイロットの場合、月のステイ時間はおよそ250時間ほどになりますので、その場合仮に3ドルのパーディアムが貰えたとすると、750ドル≒今のレートでおよそ8万5000円が給与として振り込まれます。

日本と海外の航空会社。気になる給料について

パイロットの給与体系については大まかに理解して頂けたかと思います。

では本題である日本と海外の会社のパイロットの給与について。

コロナの影響によって、多くの会社で最低保証時間が引き下げられ、給与も下がっているので、以前の情報を元に作成しています。

また、勤続年数、ボーナスによっても大きく変わりますが、わかりやすくするためにボーナス無しで1年目の情報です。これはあくまでも私の経験や、周りからの情報なので参考程度の値です。海外の情報については、私の経験と、ネット上で調べたものです。

海外では、募集をかける際に給料についてもネットで公開しているところが多いです。

ご自身で調べたいという方のために、いくつかリンクを貼っておきます。

Just a moment...
Delta Air Lines Pilot Pay
The freshest interview gouge on the net - AviationInterviews.com

日本の航空会社

< 大手航空会社>

機長:年収2300万円

副操縦士:1300万円

<LCC>

機長:2000万円

副操縦士:1300万円

<地方航空会社>

機長:1400万円

副操縦士:800万円

海外の航空会社

<米国大手>

機長:2700万円

副操縦士:800万円

<米国LCC>

機長:2000万円

副操縦士:600万円

<中国大手>

機長:3000万円 (手取り)

副操縦士:800万円 (手取り)

<中東>

機長:2100万円(手取り)

副操縦士:1400万円 (手取り)

注目すべき点は、中国と中東は手取り額でこの給料ということです。

手取り年収が3000万円の場合、日本の税制に当てはめると、年収はおよそ5600万円になります。

凄まじい金額です…。

ソラマルの場合

私は日本の航空会社で働いた後、台湾の航空会社へ移りました。

既にここまで書いたので、給料については、全く隠すつもりはありません。(笑)

日本にいたときの年収が約1100万円〜1400万円でした。毎月の手取り額でいうと、およそ70万円〜90万円です。

そして現在台湾での年収が約1100万円です。年収で見ると下がった形なのですが、台湾での生活の場合、住宅手当や年に1度の税金還付などが受けられるため、そういった面も考慮すると日本にいたとき以上の年収にはなっているかと思います。

また、航空会社の場合は、福利厚生も非常に重要になってきます。

例えば大手だと年に数回の自社便のチケットや、提携航空会社のチケットが使えるなどもメリットもあります。

単純に給与以外の面でも、操縦する飛行機は何か、機長昇格までのプロセスはどんな感じか、飛んでいる路線はどこか、このようなことがパイロットの転職には重要になってきます。

こうしたことを全て考えた結果、私の場合は台湾の航空会社へ移る決断をしました。

まとめ

今回は、ベールに隠されたパイロットの給料について詳しく解説をしてきました。

結構、ギリギリの情報を伝えたつもりではありますが、もう少し詳しく給料について知りたいという方がいらっしゃいましたら、直接ソラマルまでお問い合わせください(笑)

こうやってみると、世間一般に比べたらかなりの高給取りであることは間違い無いのですが、それと引き換えにどのような苦労があるのかということも、今後記事にしていきたいと思います。

また、コロナによってパイロットの仕事がどう変わってしまったかについての記事を読まれていない方は、ぜひこちらも一読して頂けたら嬉しいです。

次回は、高給取りであるパイロットの仕事内容について詳しくお伝えできたらと思います。

同じ高給取りの医者や弁護士と比較しても、なぜか批判を受けがちなパイロットの給料ですが、恐らく実際の仕事内容や、その大変さなどがうまく世間に伝わっていないことが原因ではないかと思います。もちろん、私が説明した後でもその給料はおかしい!と思う方がいらっしゃいましたら、ぜひご意見していただければと思います(笑)

では。

コメント

  1. エバー&ユニー航空 より:

    いつも楽しく拝読しております。
    私は国内LCCで副操縦士として乗務しているものです。
    台湾でパイロットとしてご活躍されているとの事、ブログで拝読致しました。
    可能でございましたら、3点ご質問させていただけますと幸いです。
    1.外国人乗務員にも機長昇格チャンスがあると理解しておりますが、何年程でチャンスが巡ってくるのか(勤続年数、飛行時間等)ご共有いただける範囲でご教示いただけますと幸甚です。
    2.副操縦士昇格訓練でのフェイル率について。
    3.転職活動の際、直接HPからエントリーorエージェントを通してのapplyであられたのか。
    台湾でのキャリアを目標にATP取得を検討中でございます。
    ご多忙中大変恐縮でございますが、ご確認の程、何卒よろしくお願い致します。

    • ソラマル より:

      初めまして。返信が遅くなってしまい申し訳ありません。
      台湾でのキャリアとの事ですが、お名前にありますようにエバー&ユニー航空ということでしょうか?
      それを前提でお答えしますと、
      Q:何年ほどで昇格のチャンスがあるか。
      A:早ければ2〜3年ほどでSFO(Senior First Officer)への昇格チャンスがあり、そこから1〜2年で機長昇格のチャンスがあります。ただし、これはあくまでも最短での場合です。乗務機種や会社都合によって大きく変わってきますが、日本の大手の半分ほどの期間で機長になれるチャンスはあります。

      Q:副操縦士昇格訓練でのフェイル率について
      A:入社試験さえ通れば、その後の昇格訓練でのフェイル率は限りなく低いかと思います。ただし、ゼロではありません。

      Q:HPかエージェントか
      A:私の場合はエージェントを通さずに採用説明会を通しての直接雇用です。

      何か他にもご質問等ありましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
      ソラマル

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