コロナ禍でのパイロットのスケジュール

雑談

今回の記事では、コロナの影響によりパイロットの仕事がどのように変わったのかを実際のスケジュールを比較してご紹介したいと思います。

日本におよそ5000~6000人いると言われているパイロットですが、日系の企業はコンプライアンスが厳しく、私のように情報を発信している人が少ないせいかインターネット上では想像と妄想に溢れた情報ばかりを目にすることが多いです。

例をあげると、パイロットは年収3000万円、タクシーの送迎付き、上空ではオートパイロットなので実質座っているだけで何もしない…等々。

パイロットになるための厳しい訓練や、資格の維持の大変さ、事故を起こさない為の日々の努力などをフォーカスして頂きたいところではありますが、どうしても”高給取り”といったイメージからそういった面がpick up されがちです。

隣国台湾においても、一部のパイロットが隔離のルールを破り、台湾国内でコロナ感染の原因を作ってしまったことで、”パイロットは人殺しだ”等、過激な意見も出てきて話題となりました。

‘People think pilots are murderers because we brought back the virus’: Taiwan’s Covid scapegoats
‘Imprisoned’ by quarantine and isolated from their families, flight crews have become social pariahs

無論、ルールを破ったパイロットは責任を負うべきであり、それに関しては弁明の余地はないかと思います。しかし、一体どのようなルールが敷かれているのかを把握せずに、闇雲に非難している人がほとんどというのも事実かと思います。

そこで、コロナが発生して以降のパイロットのスケジュールについて紹介したいと思います。

・これは台湾でのルールであり、国ごとによってルールは異なります。

・航空会社、担当機種、月のスケジュールによって変動しますが、これは一例です。

プロフィールでも紹介している通り、私は国際線を飛んでいるパイロットです。

詳しい説明は後述しますが、まずはコロナが始まる以前のとある月のスケジュールをご覧ください。

オレンジ色がフライト。黄土色がフライト先での泊まり。赤色がOFFです。

フライトによっては2日跨いでいる便もありますが、これは現地の出発時間と時差の影響によるものです。

フライト先でのステイ時間は、おおよそ24時間以上あります。身体を休めることは勿論ですが、体力に余裕があれば自由にどこへ行ってもいいので、観光地や、グルメなどを自由に楽しめました。お酒はフライトの前日は禁止ですので、2日以上のステイがあれば初日等に楽しむことは可能です。

この月の休みは合計13日ありました。

少し多く感じるかもしれませんが、これは長距離路線を担当する場合はよくあることです。

規則によって、長いフライトを担当した後は最低でも何日かは次のフライトまで空けなければならない。というように決まっています。

こういった規則により、パイロットの疲労が飛行の安全に影響を及ぼさないようにされています。

一見するとパイロットに対しての甘やかしのように見えるかもしれませんが、過去の事故事例を見てみると、パイロットの疲労が原因で起こされた事故が数多くあります。

長時間の飛行や繰り返しの時差の影響を受けるパイロットにとっては、しっかりと休息を取ることが安全な飛行を行う上でも何よりも重要となっています。

それでは次に、コロナが発生した以降のスケジュールをご覧ください。

上でも述べていますが、これは台湾のパイロットに適用されている措置であり、ルールは国ごとによって異なります。

コロナが発生して以降のSTAY中は、部屋の外へ一歩も出ることが許されず、食事はUber等を使って、ホテルの部屋まで運んでもらう形となっています。観光はおろか、部屋の外に一歩も出ることすら許されていません。

次に、1番目立つ「隔離」ですが、これは台湾政府がコロコロとルールを変えるために、日数は時期によって異なります。10/2現在では長距離路線後の隔離日数は5日となっていますが、上記のスケジュールの時は7日でした。

隔離中は他の人との一切の接触を禁じられます。食事に関しては、朝、昼、晩、検疫施設から支給されます。食事内容は写真のような感じです。毎日同じような食事なので、正直辛くなってきます。

また、健康的にも部屋の中から出られない生活のためどうしても運動不足になりがちです。

目にみえて不健康になっているとわかるのが、1日の歩数の変化。

コロナが発生して以降、明らかに歩数が減っているのが分かります。これは、間違いなく隔離の影響です。

また、隔離後も、行動制限といった措置が台湾では取られています。具体的にいうと、7日間の隔離後、更に7日間は以下のような制限があります。

  • 公共交通機関の利用禁止。
  • 他者との会食の禁止。
  • ショッピングモール、イベント、結婚式会場等、人が集まるところへの行くのが禁止。

つまり、要約すると一人で行動し、食事等も一人、他者との接触を避けて生活するように。とのことです。

私の上記のスケジュールでは13,14日とOFFにはなっていますが、その日はこの行動制限に該当するので、結局どこへも行けず、一人で食事をしなければなりません。

こうした状況が既に2年近く続いています。

これは全て台湾政府の方針ですので、台湾で働いている限り従わなくてはなりません。自分で好きで台湾にきて働いているので、文句を言う権利もないとは思います。

しかし、こういった現状がなかなかメディアでも取り上げられず、多くのパイロットが大きなストレスを抱えながら仕事をしている中で、一部がルールを破ったことにより(行動制限中に他者と外食した等)、ルール違反の面だけが問題視をされ、パイロットに対して更に厳しい隔離ルールを設定しようとする動きがあります。

確かに防疫という面では台湾は成功している国ではありますが、裏ではこのような厳しい措置が取られています。

こういった背景があり、前回このような記事を書かせていただきました。

無論、仕事をボイコットすればこんなストレスにさらされることもなければ、他の人たちと同様にある程度の制限があるだけで、人間らしい生活を送ることができます。

しかし、日常生活の物流や、医療品、こういった物資を運んでいるという責任があるので、この仕事を辞めるわけにはいきません。

実際、パイロットが仕事をボイコットしたら、輸入に頼っている台湾政府は相当焦ると思いますが。。。笑

コロナによって多くの方が命や職を失いました。そうしたことを考えると、たとえ減給や、辛い隔離生活を強いられたとしても「仕事があるだけでもマシ」だと思います。

決してパイロットが強いられている現状を伝えることによって、「御涙頂戴」を求めているわけではありません。

こうした現状を伝えるソースがないので、私が「正しい現実」として記事にしています。

国をあげての厳しい隔離措置によって、防疫を成功している台湾。

ある程度の自由が保障された中で、各個人の行動に任せている日本。

どちらが良いか悪いかは、個人の判断によって違うかと思いますが、私は世界へ出てみて改めて自由がある日本の良さを痛感しました。

何にせよ、早く以前のような活気ある航空業界に戻って欲しいと、切に願っています。

では。

今後も、給料3000万円や、ステイ先でのCAとの….。UFOの存在。等々、巷に溢れている数々の都市伝説を、現実の話として記事にしていこうと思います。

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