【ソラマル流】ストレス回避術!鬼教官との付き合い方

今回は、現代社会で求められる「ストレス回避」の技術についてです。

パイロットには色々な技術が求められますが、その中でも私としては操縦技術と同じくらい重要な技術が、この「ストレス回避術」だと思います。

そもそもストレスの1番の原因と言われているのが「人間関係」。

この技術さえあれば、相手の年齢、性別、国籍などの違いに左右されず、常に自分のパフォーマンスを発揮できると思います。また、パイロットの世界だけに留まらず、人生の色々な場面でも応用が効くと思っています。

これはあくまで、私が考えるアイディアであり、一つの手段に過ぎません。

しかし、何か少しでもこの方法が皆様のお役に立てることができれば幸いです。

「違い」はストレス

いきなりですが、「CRM」と言われて思いつくものはなんですか?

半分の方は、Customer Relationship Management と答えるでしょう。

それが、我々パイロットに同じ質問をすると、ほぼ100%の人が「Crew Resource Managment」と答えます。

それほど、この「Crew Resource Management」というものはパイロットの世界で重要視されています。

CRMの歴史や概要については、話せば長くなるのでここでは割愛しますが、エアラインパイロットになるにはこれでもかというほど勉強することになります。実際にエアラインパイロットになった後でも、年に1度、会社でCRMのクラスを受講することが求められています。

なぜ「エアライン」という言葉を使ったのか?これは一人で飛ばす戦闘機パイロットや単発機のパイロットとは違い、エアラインパイロットは必ず「自分以外の誰かと」乗務するパイロットだからです。

現代ストレスの9割は「人間関係」から来るものだと言われています。

自分とは違う誰かがそこに存在している以上、必ずや行動の違い、文化の違い、考え方の違いなど、様々な「違い」が生じます。そうした「違い」が結果的に衝突を生みます。そしてこれがまさしく我々が「ストレス」と感じる原因なわけです。

これは地球人として「他人」と生きている以上、避けては通れません。

エアラインパイロットの世界では、経験、性別、国籍、文化、考え方など、様々な「違い」を持ったクルー達と一緒に飛行機に乗り込み、安全に飛行機を飛ばすという「同じ目的」のもとで運航します。

様々な「違い」という問題が生じる中で、共通の目的を持つことにより、違いからくるストレスをうまく遮断し、飛行機を安全に飛ばすことができているわけです。

最強のツール「目的」

既に上でチラッと出しましたが、私が考えるストレスに対抗する最強のツール、それは「目的」です。

何を言っているのかよくわからないと思います。

わかりやすく、いくつか例をあげてみたいと思います。

例1:家事をしない旦那にストレス!

50代/ 専業主婦
50代/ 専業主婦

休日に家にいるうちの夫は、家事も手伝わない、ソファーでダラダラ。人の話も聞かない。

見ているだけでストレスなのよ!

奥さん、旦那さんと一緒に生活する「目的」はなんです?

死んだらたんまり入る保険金でしょう

それを考えたら家事の手伝いをしてくれないことなんてどうでもいいでしょう。

それまでの辛抱でっせ。ヘッヘッヘ。

・。

失礼しました。

たまにはこういったおふざけもアリかなと。

仕切り直します。

旦那さんが家事をしないことに対してストレスと感じてしまうのは、既に最初から目的が「旦那に対しての不満」からスタートしているからです。

結婚したてのラブラブな時は、たまに家にいる旦那が家事をしなくて家でダラダラしていても、「私が疲れているダーリンを支えるんだ♡」という強い目的があるので、そいういった姿を見てもストレスに感じなかったはずです。

旦那さんは過去と今とで同じ行動をしているのに、それがある日ストレスと感じるようになってしまったのは、奥様の目的が変わってしまったからに他なりません。

本当に今でも旦那を愛していて、「健康でこの先も長生きして欲しい」というのが目的なのであれば、例えソファーで寝転がりダラダラしている旦那の姿を見たとしても、「疲れているのかな?」「少し健康の為に運動したほうがいいんじゃない?」といったような思考回路になるかと思います。

その目的が強ければ強いほど、目的に関係ない事柄に関しては全くと言っていいほど無関心で、ストレスの要因になりません。

旦那が家事をしようがしまいが、健康で長生きをしてほしいという目的には一切の関係がない為に、気にならないのです。(とはいえ家事は手分けして行いましょう…。ソラマルの場合は、もはや奴隷です)

このように、目的を変えるだけで、物事の捉え方が全く違うものになってきます。

例2:怒りっぽい、怖い人に対してストレス!

鬼上司
鬼上司

ソラマルお前何度言ったらわかるんだ!!次やったらオメー、&%$#●”&-!!!

ヒエーすみません。(こんなんじゃ恐怖で何もできない・・・。)

こうした経験は、余程のホワイト企業でない限り、誰しも一度は経験したことがあるかと思います。鬼上司や鬼教官。自分の怒りを抑える事のできない哀れな上司。部下に対して怒る前に自分がアンガーマネジメントを勉強しろ!と心の中で言いたくなるかと思います。

怒られることによる恐怖心を植え付けられてしまうと、本来できるはずのパフォーマンスが発揮できなくなってしまうのはもちろんのこと、強いストレスとなって身体的にも影響を及ぼします。

こうした時の対処法、それが目的」を意識するといった方法です

パイロットに使える実践編

では、パイロットでの話。

これから教官との訓練フライト。

しかし地上で自分の準備不足により、飛行機の出発時間が遅れそうになり教官は怒り沸騰。かなりピリピリしたムードの中フライトすることに・・・。

このような場合、多くの人は「この先教官を怒らせないようにフライトをしよう」という目的を持ってフライトをしてしまうかと思います。

目的がそこなので、フライト中も常に教官の顔色を伺い、自分の神経は目の前の計器ではなく、横に座っている教官へ全集中してしまいます。

もちろん、本来計器のスキャニングに使う神経を横の教官に使っているわけですから、そんな状況では通常のパフォーマンスが出るわけもなく、更に怒られるという悪循環。結果的に強いストレスとなり、もう二度と鬼教官と飛びたくないと思ってしまうわけです。

では、具体的にどうすればいいのか?

とても簡単です。

どんな状況でも、飛行機を安全に飛ばすという強い目的を持つこと。

この目的がある場合、どういった行動になるでしょうか?先程のやりとりを例に見てみます。

鬼教官
鬼教官

ソラマルお前何度言ったらわかるんだ!!次やったらオメー、&%$#●”&-!!!

はい、すみません。

(飛行機を安全に飛ばす…飛行機を安全に飛ばす。)

その為に次に考えることは・・・。

鬼教官
鬼教官

Pitch! Speed!! ずらしてんじゃねぞゴラァ!!

てめー次ATC間違えたら、&%$#●”&-!!!

なるほど、

確かにpitch,speedがずれていると飛行機を安全に飛ばす目的が達成できない。

ナイスアドバイスだ教官!

多少教官の声がうるさいけど、それは目的と関係ないから無視無視。

鬼教官
鬼教官

返事しろやごらぁぁぁぁ!

(*ご存知ない方は、南野拓実”うっさいんじゃボケ”で検索)
(*ご存知ない方は、南野拓実”うっさいんじゃボケ”で検索)

*うっさいんじゃボケぇー!!!!!!

・・・・はい。

またやってしまいましたが、言いたいことは伝わったかと思います。

要するに、以下の3つを駆使することでストレスになり得る事柄を、ストレスと感じなくすることができるのです。

  • 適切な目的を設定する。
  • その目的を達成することだけを強く意識する。
  • 目的達成に関係ない事柄を排除する。

パイロットの仕事をする上では、この技術は非常に重要になってきます。

既に上でも述べましたが、私の隣に座る人は、自分とは様々な「違い」を持った人です。

国籍、経験、年齢、性別、性格、文化、考え方、等々・・・。

ストレスの要因になり得る様々な「違い」を持った人と、長時間の間、密室のコックピットで過ごさなければならないのです。

中には、怒りっぽい人や、せっかちな人、おしゃべりな人、無口な人、色々です。もちろん、おしゃべりな人には話を合わせたり、無口な人には過度に話しかけないなどの、”最低限のadjust“は必要かと思います。

しかし、あくまで目的は”飛行機を安全に飛ばす“という意識なので、何かそれによりストレスの要因になり得る事象が発生した際は、目的と関係ないので、意識的に排除をすることができます。

これが、「目的」を使ってストレスを排除するといった技術です。

まとめ

今回は、私が日頃から使っている技術をお話ししましたが、勿論こんなのただのソラマルの気まぐれな「雑談」に過ぎません。

ただ、100人中1人でもこの話が役に立ってもらえれば、この雑談の目的は達成したことになります。

人間関係、将来の夢、夫婦生活…決してストレスとは切り離すことのできない世の中ですが、技術によってストレスをストレスと感じない様にすることは可能です。

パイロットを目指されている方に勘違いしてほしくないのは、これはCRMの技術ではないということです。

あくまで、ソラマル流のテクニックなので、訓練教官に聞いたりしないでください。なんだそれと言われるのがオチです。(笑)

CRMについて本格的に学びたいという方は、「機長の危機管理」「その時機長は-生死の決断」という本を読まれることをお勧めします。

この本を執筆されている、桑野さん、塚原さん、前田さんは元エアライン機長の方々で、私は3人に実際にお会いしたことがありますが、3名ともCRMのスペシャリストです。

CRMの技術は、航空の現場以外でも、医療の現場や、チームワークが求められる現場など、様々な分野で取り入れられており、非常に奥が深いです。

私は学生時代にこの本に出会い、直接にお話を聞きたいと思い、桑野さんが所長を務めていらっしゃる「日本ヒューマンファクター研究所」の講演会に参加しました。

まだパイロットになる前の私には難しいかと思っていましたが、「なぜ人はエラーを起こすのか」といった事柄について、非常にわかりやすく教えて頂きました。学生時代は友人との遊びや、勉強、バイトなどでこうした講演会に参加するのは億劫かもしれませんが、何事も「行動」あるのみです。

本気でパイロットを目指されている方は、必ずや必要になるCRMについて、今のうちから学んでおくことをお勧めします。

今でも講演会をやっているかはわかりませんが、興味がある方用にリンクを貼っておきます。

日本ヒューマンファクター研究所

今回はソラマル流のストレス回避術についてお話ししました。

特に大した技術でもありませんが、大きなストレスを抱えて悩んでいらっしゃる方にとっては、少しばかり参考になるのではないかと思います。

最近Twitterで急にパイロットを目指している方のフォロワーが増えたため、このような記事を作成しました。

何か書いて欲しいジャンルなどございましたら、いつでもお問い合わせからリクエストお待ちしております。

では!


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