今回は、私がエアラインパイロットになって感じた、パイロットという職業のメリット/デメリットについてご紹介したいと思います。今回はメリット編です。
この記事が、パイロットを目指す方のモチベーションになれば幸いです。
メリット
待遇面
Staff Travel
給与面については以前に書いた記事で既にご紹介しましたので、まだご覧になっていない方は以下の記事をご参照ください。
パイロットになると給料以外にも様々な待遇を受けることができます。一般的に福利厚生と呼ばれるものですが、その中でもこの仕事ならではのものがStaff Travelと呼ばれるものです。これはパイロットだけではなく、航空会社の社員全員に恩恵があるものですが、これを利用することによって、自社便だけでなく、他社便のチケットが無料、または格安で利用できるものです。
利用できる範囲や回数は各航空会社によって異なりますが、待遇の良いところですと自分だけではなく二親等まで利用できたり、または親族だけでなく誰でも好きな人を指定して(友達でも可)選ぶことができる会社などもあります。現在はコロナ禍の影響により旅行ができない日が続いていますが、旅行好きの人にとってはこれとない待遇です。
傷病休暇
また、その他の福利厚生として、非常に多い傷病休暇がもらえます。これも会社によって異なりますが、およそ年に20〜30日が一般的です。これは有給とは別に貰えるものです。パイロットは常に心身が健康な状態でないと乗務をしてはいけないことになっているので、多少の微熱があってだるいけど今日は頑張ろう。ということは許されません。少しでも乗務に支障をきたすような状態では、乗務前に自ら申告をし、そういった時に備えてスタンバイしているパイロットが代わりに稼働することになります。全ては安全のためとはいえ、会社からのこういった手厚いサポートもメリットの一つです。
特別な世界
「パイロットだけが受けられる恩恵」これは一つだけしかありません。
それはお金でもなく、傷病手当でもなく、コックピットから見られる空の世界です。
パイロット以上に稼ぐ職業だったり、休みが多い仕事はたくさんあるでしょう。しかし、これだけはパイロットしか手にすることのできないメリットであり、パイロットを目指す上で最もモチベーションになるものです。
既に私のブログを見て頂いている方は覗いてくれた方もいるかもしれませんが、このブログのTOPメニューから、それがどういった世界なのかをご覧いただけます。
いくらお金持ちであろうと、頭がよかろうと、コックピットの正面に広がる絶景を目にすることができるのはパイロットになれた人のみです。
ぜひ、これからパイロットになることを目指している方は、お金などの面ではなく、こういった絶景をみることをモチベーションに頑張って頂きたいです。そして、できれば日本国内の景色だけではなく、世界の様々な景色を見ることを目指し、国際線パイロットを目指して頂きたいです。
少し話が逸れますが、私は批判を受けながら若いうちに世界へ飛び出しました。それは当初の夢がパイロットになることではなく、国際線パイロットになって世界を飛び回ること。だったからです。
夢を実現して感じたことは、この道が正解だった。ということです。日本の国内に留まり、日本の空港の知識や操縦技術を極めるというのは大いに素晴らしいことだと思います。その道を否定するわけではありません。
しかし、アラスカの雪山やロシア上空のオーロラ、ロンドンのヒースロー空港近くに見えるウィンザー城を眺めながらのアプローチ、こういった光景は同じパイロットでも世界を飛ぶ国際線パイロットにしか味わえないものです。
もちろん、その分、各国のルールや、ATCの違い、洋上飛行の知識など、勉強しなければならないことは山ほどあり、大変です。しかし、そこに費やした大変さ以上の感動を必ず享受できると思います。
終わりが見えない仕事
私がパイロットを目指した理由の一つが、「普通のサラリーマンになりたくない」ことでした。この普通のサラリーマンというのは、私の概念では定時出社のデスクワーク、そして毎日同じ作業の繰り返し。こういった仕事を定年まで続けたいとは私は思いませんでした。
一方でパイロットの仕事は、1度として同じ日が存在しません。常に違うクルーと乗務し、天候、目的地、機体、毎回が新しい物事の組み合わせで仕事を行います。
そして常に新しい航空ルール、社内規定の変更、操作手順の変更などを勉強しなければならず、1度でもサボってしまうと最新の情報に追いつくのに相当苦労します。
また、これは副操縦士から機長に昇格した後でも同じことが言えると思います。ここまで勉強すればゴールだ!というのが存在せず、定年を迎えるまでに一生勉強し続けなければなりません。
逆にいうと、努力をすればする程それが実っていく仕事でもあり、積土成山の世界です。
常に成長し続けたい!こういった環境を求めている人には非常に大きなメリットだと思います。
仕事が楽しい
乗り物の操縦をするのが嫌いでパイロットになっている人はいないと思います。逆にいえば、パイロットはみんな乗り物を操縦するのが大好きなのです。
仕事をしていて、「今の仕事が楽しい」と感じられる人は日本に何割いるでしょうか?
パイロットという仕事は確かにストレスも多く、常に緊張感が抜けない職業ではありますが、それ以上に仕事を楽しめる職業です。
離着陸はもちろんですが、国ごとに訛りがある管制官とのやりとり、夜明け時の景色、運が良ければ見ることのできるオーロラ、そしてステイ先での観光・・・この仕事は楽しいと思える要素が至る所にあります。
毎回の仕事を楽しみながらできるというだけでも、非常に大きなメリットだと思います。
スタンバイ勤務
これはメリットに入るのか微妙なところではありますが、パイロットやCAにはスタンバイ勤務といったものが存在します。
スタンバイの細かいルールは各会社ごとによって違ってきますが、体調不良の乗員や、急なイレギュラー運航などにより乗員が必要になった際には、スタンバイに入っているパイロットが呼び出されます。
たとえ呼ばれなくてもこの日は勤務日として扱ってくれるため、呼ばれなかったラッキーといった感じです。しかし、いつ呼ばれるかもわからないため、もちろんお酒も飲めず、不要な外出もできません。
それでもこういった勤務があることにより、稼働されなければゆっくりと身体を休めることに使えるので、大きなメリットといえます。
稼働率は繁忙期であったり会社の方針によっても大きく異なりますが、私の経験上、スタンバイ勤務から稼働する確率はおよそ2割〜3割程です。しかし、乗員のスケジュールをタイトに組んでいるLCCなどでは、スタンバイは9割稼働するといったこともありますので、こればかりはなんともいえません。
ステイ先での観光
パイロットになることの大きなメリットの一つが、ステイ先での楽しみです。
私が日系の会社に勤めていた時は、北は北海道の海鮮から、南は沖縄のやっぱりステーキまで色々とステイ中にグルメを楽しみましたが、外資系に来てからは楽しみ方も変わりました。
世界中を飛び回るようになってからは、私の趣味は博物館や美術館を巡ることになりました。
ロンドンの大英博物館や、パリのルーブル美術館、ニューヨークのメトロポリタン美術館など、今まで一切芸術に興味のなかった私が、こうした趣味に目覚めたのは自分でも驚きです。
現在はコロナの影響により、ステイ先の部屋から一切外出することを禁じられているため、こうした楽しみを既に2年近くできていませんが、普通では飛行機代やホテル代を払って観光に行くところを、仕事のついでにタダで観光できてしまうのは、この仕事の大きなメリットといえます。
社会的評価
最後に現実的な話ですが、パイロットは社会的信用度がある為、銀行の融資や、カードの審査ではかなり有利です。実際に私が経験した話として、日本でのクレジットーカードの審査に一度落ちてしまい、理由を尋ねるときに私の職業も伝えたところ、翌日審査に通るといったことがありました。(卑しい)
パイロット=なるのが難しい。というのが世間一般のイメージとして広まってくれているため、私の職業を伝えるだけで勝手に、私=努力した人、エリート、すごい人、尊敬、等々・・・有る事無い事、勝手に思ってくれます。残念ながら実際の私はそのような人物像とは違いますが、こういったメリットをありがたく頂戴しながら生きています。(笑)
ここまで聞くとメリットだらけのパイロットという職業。
この仕事は最高にして最強なのか?
もちろんそんなことはなく、デメリット部分も多々あります。
記事が長くなるため、メリットとデメリット部分で記事を分けることにしました。
次回はデメリット部分についてご紹介します。
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